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コラム

Column

仮設足場の図面作成の手順と注意点

現場に合わない仮設足場を設置してしまい、後から修正や解体が発生する。こうしたトラブルは、実は図面作成の段階で避けられることが多いのです。特に近年では、CADを活用した緻密な計画が求められており、作業の効率化や安全性の確保、コストの最適化にも直結します。

 

とはいえ、図面作成に必要な寸法や部材の選定、立面図や平面図の割り付けなど、どこまで対応すれば良いか分からないと感じている方も多いのではないでしょうか。実際、支保工や枠組足場、くさび式など足場の種類に応じた設計の知識も求められるため、業務担当者にとっては大きな負担です。

 

この記事では、仮設足場図面作成の基本と現場での役割、作図における注意点まで網羅的に解説しています。建物の高さや離れに応じた部材配置、mm単位の調整に関するポイントも含めて解説するので、施工ミスや再依頼による損失リスクを減らしたい方にとって、必ず役立つはずです。

 

仮設足場の図面作成の基本知識と役割

仮設足場図面とは何か

仮設足場図面とは、建設現場などで一時的に設置される足場の配置や構造を詳細に示した設計図のことを指します。これは施工前に必ず用意される計画図であり、現場の安全性を保つための基本となる資料です。足場の種類、設置位置、部材の寸法や数量、地面からの高さ、そして隣接する建物や道路との距離までが記載されており、現場の状況や建物形状に応じた対応が求められます。

 

特に仮設足場図面では、単に足場の位置を示すだけでなく、風圧や荷重に耐えるための強度計算の結果や、隙間の有無、安全対策の工夫など、詳細な設計意図を視覚的に伝える役割も果たします。CADソフトを用いて精密に作図されることが多く、Jw_cadなどの無料ソフトや専門の足場図面専用ツールも利用されています。こうしたソフトでは、3D表示によって足場の全体像を把握しやすくする機能や、必要部材の自動拾い出し機能が搭載されている場合もあります。

 

足場図面は、現場作業者だけでなく、施工管理者や監督、施主にとっても非常に重要な資料です。これにより、安全基準を満たした設置が可能となり、不要なトラブルや事故を未然に防ぐ効果が期待できます。特に、くさび式足場や単管足場、枠組足場など足場の種類によって設計上の留意点が異なるため、それぞれの足場に応じた図面作成のノウハウが求められます。

 

また、足場図面には平面図や立面図が含まれることが一般的で、それぞれの図が示す情報は異なります。平面図では、建物との離れや隣地との関係、出入口や資材搬入路などの情報を示し、立面図では足場の高さや層数、支柱の位置、手すりの有無などを視覚的に示します。こうした情報の明確化によって、現場での施工精度が高まり、作業の効率化にもつながります。

 

仮設足場図面は、建築計画や工事計画書の一部として提出されることが多く、地方自治体や元請け企業から提出を求められるケースもあります。そのため、一定のフォーマットや記号表現が定められており、業界共通の基準に従って作成されます。足場図面に必要な記号には、支柱、ブラケット、手すり、昇降口、支保工などがあり、これらを正確に示すことで施工者間の認識違いを防止できます。

 

足場図面は、設置計画だけでなく、解体時の手順や安全確保にも活用されます。特に狭小地や変形敷地など、標準的な足場配置が難しい現場では、事前の図面作成がトラブルを回避する鍵になります。さらに、現場での修正や変更が必要となった場合も、図面があれば柔軟な対応が可能となり、施工全体の質と安全性の維持に大きく寄与します。

 

以下に、仮設足場図面に盛り込まれる主な情報項目を整理しました。

 

図面に記載する情報項目 内容の例
足場の種類 単管足場、くさび式足場、枠組足場など
支柱・布材の位置 間隔、寸法、地面からの高さなど
平面図の配置情報 建物の配置、離れ寸法、出入口の有無など
使用部材 手すり、ブラケット、昇降口、ジョイント部材等
安全対策 落下防止設備、ガードフェンスの配置など
使用ソフト Jw_cad、足場図面専用ソフト、Excelツールなど

 

このように、仮設足場図面は現場全体の工程や品質、安全性を左右する重要な役割を担っています。単なる設計資料としてだけでなく、現場でのコミュニケーションツールとしても機能するため、常に正確かつ分かりやすい内容であることが求められます。

 

図面作成の重要性と現場での役割

図面作成は、仮設足場工事において単なる準備作業ではなく、現場全体の安全性と作業効率を左右する中核的なプロセスです。特にビケ足場や単管足場などの仮設足場は、建物ごとに形状や敷地条件が大きく異なるため、現場の実情に応じたオーダーメイドの設計が必要です。そのためには、建物の寸法や高さ、敷地の傾斜や障害物の有無、周囲との距離などを正確に把握し、それを図面に反映する技術力が求められます。

 

図面が果たす現場での役割としてまず挙げられるのが、部材の拾い出しです。足場に必要な部材は種類が多く、それぞれの長さやサイズ、数を正確に計算することで、無駄な資材の持ち込みや不足を防ぐことができます。図面には、支柱の配置、ブラケットの取付け位置、昇降設備の設置場所、作業スペースの確保状況などが記されており、これが部材発注の根拠となります。

 

また、図面作成の段階で、風荷重や積載荷重に対する強度計算を実施することで、現場の安全対策を事前に講じることができます。こうした設計の裏付けがあることで、施工時の手戻りや安全上の問題を未然に防ぎ、円滑な進行が可能となります。

 

足場計画図の作成は、施工後のトラブル回避にもつながります。例えば近隣との距離が十分に取れない場合や、敷地が狭小な場合でも、図面でシミュレーションしておくことで現場対応がしやすくなります。工事車両の搬入ルートや資材置き場の配置、仮囲いの範囲設定など、図面上で事前に決定しておくことで、現場での混乱を防ぐ効果があります。

 

さらに、近年ではスマートフォンやタブレットで図面を閲覧できるシステムも導入が進んでおり、現場での迅速な確認や共有が可能となっています。特に「足場図面アプリ」や「足場図面自動作成ソフト」などを利用することで、効率的な作成・修正が行えるようになっており、図面の運用性も向上しています。

 

足場図面の作成と運用が、なぜそれほどまでに重要視されるのか。その理由は以下の通りです。

 

1 現場の安全性を高めるため
2 設置・解体作業の効率を向上させるため
3 資材管理とコスト削減を両立するため
4 施工品質を標準化・均一化するため
5 関係者間の情報共有を円滑にするため

 

これらの要素をすべて実現するためには、図面がただの計画書ではなく、実務に即した正確な資料である必要があります。特に近年は建設現場の多様化が進み、狭小敷地、複雑な建物構造、地域ごとの施工基準の違いなど、様々な課題に対応するための柔軟性が求められます。

 

足場図面が必要となるシーンと背景

工事の種類によって異なる図面の必要性

足場図面の作成において最も重要な要素のひとつが「工事の種類」に応じた適切な対応です。たとえば新築工事や解体工事、改修工事のいずれかによって、必要とされる足場の構成や図面の詳細度が大きく異なります。工事の内容によっては足場の設置範囲、使用する部材の種類や数量、設置時期や工程の配慮までが異なるため、それぞれに応じた図面作成が求められます。

 

新築工事では、まだ建物の躯体が存在しない段階から作業が始まるため、足場が最初の工程のひとつとなります。そのため、設置位置や構造物との距離、部材配置の正確さが作業効率や安全性を大きく左右します。一方、改修工事では既存の建物に足場を設ける必要があるため、建物形状に合わせた柔軟な足場設計が求められます。突出部分やくぼみ、ベランダなどの構造に対応した詳細な図面が必要で、場合によっては立面図や部分図も含めて作図を行います。

 

解体工事では安全性を最優先に考慮した足場設計が必要不可欠です。構造物が徐々に取り除かれていく中で、足場自体も順次解体されていくため、全体構造の強度計算や作業導線の確保などが重視されます。このように、工事の目的や特性に応じた足場図面の設計は、施工全体の計画を円滑に進めるための基本となります。

 

また、外壁塗装や防水工事などの短期工事では、作業スペースの最適化とコスト削減が求められ、単管足場やくさび式足場の活用が一般的です。これに対応した簡易図面の需要も高く、手書きやエクセル形式で簡潔に仕上げるケースも見受けられます。こうした現場では、アプリや足場図面ソフトを用いた自動作成機能が活躍しており、CADデータの活用によって作成時間を大幅に短縮する動きも進んでいます。

 

このように、図面の作成方法も工事の種類によって異なります。簡易的な作図が可能な案件であっても、作業員の動線や安全対策を十分に盛り込む必要があり、単に見た目の設計図ではなく、現場作業の根拠となる計画資料としての役割が期待されます。

 

足場図面の作成時には、使用する足場資材の拾い出し、部材の配置、支柱の高さや間隔の調整、通路幅やブラケットの取付位置といった詳細項目を正確に反映する必要があります。これらは、工事内容に即した「使える図面」として評価されるための最低限の要件ともいえるでしょう。

 

建築業界における法的・安全上の背景

足場図面が求められる理由のひとつには、建築業界が抱える法的および安全面での厳しい基準があります。これは単に設計資料としての役割を超え、労働災害防止や建築基準法への適合、さらには施工体制台帳や元請管理体制の整備といった法令遵守の証明にも直結します。

 

厚生労働省が定める労働安全衛生規則では、高さが2メートル以上の場所で作業を行う場合には、墜落防止措置が義務付けられており、それを実現する構造物として仮設足場が必要とされます。この足場が適切に設計されているかどうかは、施工前の図面に明確に示されていなければなりません。

 

また、足場には風圧や作業負荷に耐える強度計算が求められるため、一定の荷重に対する安全率を満たす設計が不可欠です。こうした強度に関する情報は、足場計画図や計算書として作成され、図面と一体で取り扱われます。建築確認や現場監督者の承認を得るうえでも、これらの資料は重要な役割を担います。

 

現場での安全意識の高まりとともに、作業者の墜落や落下物による事故を未然に防ぐための取り組みが強化されています。たとえば、足場に設置する階段や昇降設備の位置、手すりや転落防止柵の仕様なども図面で詳細に指定する必要があります。図面上での事前確認によって、施工ミスや不備を未然に防ぐ効果が期待されます。

 

さらに、建築現場では複数の業者が同時に作業を行うため、足場の使用計画が混乱を招かないよう、事前に明確な設計が求められます。足場の配置が他の作業に干渉しないように、図面上で工程全体との整合性を図ることが、安全でスムーズな施工につながります。とりわけくさび式足場や枠組足場など、構造の異なる足場が使用される場合には、その特徴に応じた設計が必要です。

 

仮設足場図面の作成手順とフロー

ヒアリングと現地調査の進め方

仮設足場図面の作成において、まず重要となるのがヒアリングと現地調査です。この初期段階を丁寧に行うことが、後の設計・施工における安全性や効率性を大きく左右します。現場ごとに異なる条件を的確に把握し、必要な情報を網羅的に取得することで、足場計画の精度を高めることが可能になります。

 

最初のヒアリングでは、施主や元請からの要望を細かく聞き取ります。建物の構造や高さ、作業内容の種類、作業員の動線、車両の出入り、隣接建物や歩道との距離、近隣の状況、搬入ルートなど多岐にわたる項目が対象です。さらに、作業日程や使用する部材の種類、使用頻度、足場の解体時期に至るまで、すべての条件を把握する必要があります。

 

その上で、現地調査を行う際には、建物の高さや立地、傾斜、地盤の状況、地表面の凹凸などを詳細に確認します。敷地が狭小である場合や道路と建物が近接している場合には、安全に配慮した部材配置が求められます。また、単管足場やビケ足場など、仮設足場の種類に応じた適切な調査方法が必要です。

 

調査内容を正確に反映させるため、メジャーやレーザー測定器を用いて寸法をmm単位で取得し、写真や手書きスケッチを活用して情報を記録します。特に高所作業が含まれる現場では、足場の組み方に制約が出ることもあるため、複数視点から現場を見直す工夫が重要です。

 

また、足場図面の作成を依頼する側としても、できるだけ具体的な要望や懸念点を伝えておくことが求められます。これにより、図面上での不整合や再設計のリスクを低減でき、納品までの時間短縮にもつながります。現場環境に影響する要因をすべて洗い出し、記録しておくことで、足場図面作成の精度と実効性が飛躍的に高まります。

 

CADソフトを使った図面作成の基本

ヒアリングと現地調査で収集した情報をもとに、次に行う工程がCADソフトを活用した図面作成です。足場図面では、mm単位の精密な寸法管理が必要とされるため、手書きでは対応が難しく、デジタルでの作図が主流となっています。

 

足場図面の作成には、主にJw_cadやAutoCADといった汎用性の高いCADソフトが用いられていますが、近年では足場専用CADソフトも多く登場しており、仮設資材の配置や割り付け、部材の拾い出しまでを自動化する機能を備えているものもあります。これにより、図面の精度と作業効率が大きく向上します。

 

図面の基本は、まず平面図から作成を始め、建物の外形や配置状況を正確に反映させます。足場の外周を囲むように単管やくさび式、枠組足場の構成をCAD上で再現し、高さや設置位置を立面図として視覚的に把握できるようにします。足場の強度や支保工の有無、安全帯の固定位置なども、図面上で明確に示すことが重要です。

 

CADを使用する際には、作業環境に応じたスケール設定や、縮尺の統一も求められます。たとえば、住宅現場と大型商業施設では求められる図面の細かさが異なるため、現場特性に合ったテンプレートや記号を活用する必要があります。また、図面内で使用する記号や注釈は、読み手にとって分かりやすい表現に統一し、複数の関係者が情報を正確に読み取れるよう工夫することが求められます。

 

さらに、足場図面には安全性の観点から、通路幅の確保や落下防止措置の位置、立ち入り禁止区画なども含めることが推奨されます。CADソフトのレイヤー機能を活用することで、これらの情報を階層的に整理し、必要に応じて切り替えて確認できるようにしておくと便利です。

 

図面作成時には、後工程で使用する足場材の数量を拾い出すことも可能です。部材の長さやサイズ、ブラケットの種類、必要なジョイント数などをあらかじめ算出することで、施工現場での部材不足や手戻りを防ぎます。

 

設計図との連携とチェックポイント

足場図面の作成では、建築や改修の設計図との整合性を確保することが不可欠です。元となる設計図と連携して初めて、安全で現実的な足場計画が成立します。この連携が不十分だと、図面上では問題がなくても、現場での支障や作業中断につながることがあります。

 

まず設計図をもとに、建物の外壁寸法、開口部の位置、設備の突出部、足場の干渉箇所などを正確に把握します。これにより、部材の割り付けやブラケットの設置位置を適正に設定することが可能になります。また、排気ダクトや雨樋、手すりといった設備機器の干渉にも注意が必要で、見落としがないようCAD上で重ね合わせて確認する方法が一般的です。

 

足場の立地条件や建物の構造によっては、法規制や施工基準に準拠した配置が求められるケースもあります。たとえば、建物と隣地との間に設ける離れ寸法、支柱の根入れ長さ、道路使用許可の有無などは、すべて法的根拠に基づいて図面上に反映させる必要があります。

 

設計図と足場図面を連携させる際のチェックポイントとして、以下の点が重要です。

 

  • 建物の平面形状と立面形状が一致しているか
  • 高さや階数の情報が反映されているか
  • 設備の取り合いと足場部材の干渉を確認しているか
  • 法的な基準に基づいた離れや通路幅が確保されているか
  • 荷揚げスペースや資材の一時保管場所が図面に示されているか

 

これらのポイントをすべて網羅的に確認し、設計段階から施工計画まで一貫して対応できる図面に仕上げることが理想です。また、複数の関係者が同時に図面を確認する場面では、注釈やコメント機能を活用して認識のズレを防ぎましょう。

 

さらに、図面修正が必要となった場合には、変更箇所を明示するルールを定め、最新版の図面が確実に関係者全員に共有されている状態を保つことが大切です。古い図面をもとに作業が進行してしまうと、現場でのトラブルや安全性の低下を招く恐れがあります。

 

このように、仮設足場図面は単体で完結するものではなく、設計図との整合性を常に保ち、関係者全体で情報共有を図ることが安全で効率的な施工に直結します。チェック体制と連携フローを明確にし、高品質な図面による現場運用を実現することが求められます。

 

仮設足場図面の具体的な記載内容と読み方

足場の種類別の図面記載例

仮設足場図面には、施工現場の安全性と作業効率を高めるための重要な情報が数多く盛り込まれており、その中でも足場の種類に応じた記載例は特に注視すべき項目です。枠組足場や単管足場といった代表的な足場は、それぞれ構造や設置目的が異なるため、図面上での読み方や確認すべきポイントも変わってきます。

 

まず、枠組足場の図面記載例では、躯体に沿って一定間隔で設置された柱枠や筋交いの配置、踏板の位置、ブラケットの有無などが丁寧に描かれています。特に、建物外周部に面する足場では、転落防止用の手すりや中さんの明示が重要となります。これらの部材は記号や線の太さで区別されており、平面図と立面図の両方で読み解くことが求められます。

 

一方、単管足場の場合は、パイプの径や接合部のクランプの種類、支柱間隔などが細かく記載されることが一般的です。仮設足場図面では、使用する単管のサイズや本数、緊結部材の配置まで明示されており、施工計画に必要な情報が網羅されています。また、単管足場では複雑な形状の建物や狭小地にも対応しやすいため、その分図面も細密で柔軟性のある記述が求められます。

 

最近では、こうした図面を手書きで作成するケースは減り、CADによる作図が主流です。特に、足場図面CADでは、ビケ足場やくさび式足場といった特殊な構造にも対応可能なテンプレートや記号ライブラリが用意されており、施工図の効率的な作成を支えています。また、エクセルと連携できるソフトウェアやアプリも登場しており、必要な部材を拾い出す作業や施工面積の計算なども自動化されています。

 

図面を見る際に注意すべき点は、足場と建物との離れ寸法や、出隅・入隅などの特殊部位での処理方法です。特にコーナー部や階段周辺は強度や安定性に関わるため、詳細な作図とそれに基づく読み取りが欠かせません。記載されている図面が平面図であれば、配置や通路の幅、材料置き場との兼ね合いを確認し、立面図であれば高さ方向での安全対策や作業スペースの確保状況を見極めます。

 

くさび式足場や支保工などを用いた特殊な仮設構造が必要となるケースでは、図面の複雑さが増し、経験と知識が求められます。支柱やジャッキベースの配置、荷重の分散状況、さらには解体時の安全確保についても図面上であらかじめ配慮されているかを確認することが大切です。現場によっては、足場設置前に計算書を添付し、構造上の安全性を証明する必要もあります。

 

足場図面を確認することで、現場で使用される部材の種類や数量、搬入ルート、作業導線なども明確になります。これにより、作業員の安全を確保するとともに、施工スケジュールの最適化が可能となります。図面作成には専門的な知識が必要とされるため、経験豊富な技術者や仮設業務に精通した担当者の関与が欠かせません。

 

足場の種類に応じた図面の読み解きは、仮設工事の成功に直結する重要なプロセスです。現場の条件に応じて適切な足場を選定し、図面に正確に反映することで、安全かつ効率的な施工が実現します。近年では三次元の3Dモデリングを用いた図面作成も進んでおり、より視覚的に足場の構成を理解することが可能になっています。これらの手法を適切に活用することで、仮設計画全体の品質向上が期待できます。

 

寸法・資材・荷重などの記載ルール

仮設足場図面には、寸法、資材、荷重といった要素が詳細に記載されており、現場での施工精度と安全性を左右する極めて重要な情報源となります。これらの項目は、それぞれ明確なルールと基準に基づいて図面に落とし込まれる必要があり、現場担当者や設計者はその読み方と意味を正確に理解することが求められます。

 

寸法に関しては、支柱や布材の間隔、建物からの離れ、足場の高さなどが記載されます。たとえば、一般的な枠組足場であれば、支柱間隔はおおよそ1800mm、布材の高さ間隔は900mm程度とされていますが、建物の形状や作業内容に応じて調整が必要です。図面にはこれらの数値がミリ単位で明記され、施工前の段階で各部材の設置位置が明確に把握できるようになっています。

 

資材に関する記載では、使用される足場材の種類と数量、品番、材質などが明示されます。枠組足場、単管足場、くさび式足場などの形式に応じて、必要となる部材や付属品も異なるため、それぞれに応じた資材選定が必要です。図面と併せて資材拾い出し表が作成されるケースが多く、エクセルや専用アプリを活用して正確な数量を算出します。

 

荷重についても、仮設足場図面では厳密な記載が求められます。作業者の体重や機材の重さ、積載される資材の荷重などを総合的に考慮し、安全係数を乗じた上で構造設計が行われます。こうした情報は、別途添付される計算書に詳細が記載されることもありますが、図面上でも主要な支柱やブラケットの耐荷重性能が注記されるケースがあります。特に、荷重が集中する部分には補強材の使用や部材の増設が必要となるため、図面上の注意書きや記号を見落とさないことが重要です。

 

寸法や荷重に関連して、安全に関する法令やガイドラインの遵守も図面に反映される必要があります。たとえば、高さ2メートル以上の足場には手すりの設置が義務づけられており、その位置や構造が図面上で確認できるようになっています。さらに、通行人保護のための防護棚やシート類の設置位置、道路使用許可が必要な区域での施工範囲の明示なども重要な記載事項です。

 

寸法や資材、荷重の記載には、CADソフトによる正確な作図が強く推奨されています。近年では足場専用の作図ツールや3Dモデル化機能が登場し、より直感的かつ詳細な設計が可能となりました。こうした技術の進化により、仮設図面の品質は格段に向上しており、施工現場でのリスク低減にもつながっています。

 

図面を読み解く側も、こうした高度な情報を正しく理解できる知識と経験が求められます。施工管理者や現場責任者が寸法・資材・荷重に関する情報を正確に把握していれば、資材の無駄を省き、コスト削減にも寄与します。さらに、こうした図面情報を基にした施工計画の見直しや変更にも迅速に対応できるため、結果として全体の工程管理もスムーズに進行します。

 

仮設足場の図面における寸法・資材・荷重の記載は、単なる設計図ではなく、安全で効率的な現場運営を支える重要な基盤です。正確で網羅的な図面作成と、その内容を読み解く力の両方が揃って初めて、仮設工事の品質が確保されるのです。今後もこうした図面作成の標準化と技術向上が進むことで、業界全体の信頼性と施工精度の向上が期待されます。

 

まとめ

仮設足場の図面作成は、現場の安全性や作業効率を確保するうえで欠かせない重要な工程です。とくにCADを活用した正確な作図や、建物の形状や高さ、部材の配置を考慮した綿密な計画が、後の工事全体の品質と進行に大きな影響を与えます。

 

しかし、足場の種類や設置条件に応じて作成すべき図面の内容が異なり、立面図や平面図の割り付け、支保工の検討、mm単位の調整など、どこまで踏み込んで対応すれば良いか分からず、悩まれる方も多いのではないでしょうか。

 

本記事では、図面作成の基本から、実際の現場で発生しやすい課題、そして作図におけるチェックポイントまでを一貫して解説しました。建物と足場との離れの調整、部材の選定、くさび式や枠組足場に応じた対応、さらには納品スケジュールや修正への柔軟な対応の重要性にも触れています。

 

仮設足場の図面作成は、ただ設計するだけではなく、安全性の確保、費用の最適化、納期への対応、そして法令遵守といった複数の視点を総合的に考慮する必要があります。作業者の安全を守り、無駄なコストやトラブルを防ぐためにも、図面作成を単なる業務として捉えるのではなく、計画全体の中核と捉えて丁寧に取り組むことが大切です。

 

今回の内容を参考にすることで、仮設足場の図面作成において見落としがちなポイントや現場対応力の重要性を再認識いただけたのではないでしょうか。今後の工事や依頼の場面で、より安心かつ効率的な対応ができるよう、日々の業務に役立てていただければ幸いです。

 

よくある質問

Q. 仮設足場図面の作成はどんな工事で必要になりますか
A. 足場図面は、住宅リフォームのような小規模工事から、高層ビル建設・解体・塗装・外壁改修といった中〜大規模工事まで、ほぼすべての建築工事で必要になります。特に高さ5m以上の足場を設置する場合や、道路をまたぐ仮設足場を計画する場合には、法的にも図面提出が求められます。加えて、建築基準法や労働安全衛生規則に準拠した強度計算や部材配置が求められるため、設計段階から正確な図面作成が不可欠です。

 

Q. 図面作成にはどのような情報が必要ですか
A. 仮設足場図面を正確に作成するためには、建物の形状や高さ、現場の配置図、障害物の有無、くさびや単管などの足場種類、使用部材のサイズや長さ、作業ステージの高さ、そして支保工の必要性などの情報が欠かせません。また、CADソフトでの作図にはmm単位の寸法精度が必要となるため、現地調査と設計図との照合も重要です。荷重条件や設置条件により必要な強度計算も変わるため、事前のヒアリング内容によって図面精度が大きく左右されます。

 

会社概要

会社名・・・株式会社興建

所在地・・・〒745-0621 山口県周南市原646‐15

電話番号・・・0833-44-7552